生態系を復元させる工法で大雪山の登山道を整備(2)

一般的な土木工事とは少し異なる「近自然工法」で、登山道を整備する「大雪山 山守隊(やまもりたい)」。岡崎哲三代表理事に、侵食を止めて生態系を復元させるという独特の工法や山とのつきあい方、上川アイヌへの思いを聞きました。

(写真提供/大雪山 山守隊)

大雪山にたくさんの人が来るのは大賛成

岡崎さん

こういう話をしていると、そもそも山に人が入ることがいけないみたいに感じる人もいるかも知れませんが、私自身は、大雪山を登山する人がいるのも、ツーリズムで大勢の人が訪れるのも大賛成です。大雪山は、北海道が誇る大自然ですから。

ただ、管理はしないといけませんよね。崩れた登山道は事故の原因になり得るし、大切な自然を失うことにもつながる。未整備の状態を見た登山者が、「こんなもんだよね」と思ってしまう感覚が当たり前になってはいけないなと。

(写真提供/大雪山 山守隊)

そういう意味では、登山者の意識は確実に変わってきています。20年前に比べると、山に落ちているゴミは少なくなりマナーも改善されています。崩れている山のために「何かできることはないか」と考える登山者も、随分多くなりました。

また世界には、国立公園や自然の保護保全に対する意識の高い国がたくさんあり、そのような国にとっては、国立公園を利用する時にお金を支払い、それを保護保全の費用に回すのは当たり前の感覚です。

日本もこれまでとは違う考え方やシステムを取り入れ、人と自然との関係を、より良いものにしていけたら良いですね。

(写真提供/大雪山 山守隊)

今後は山守隊も活動規模を拡大し、様々なアイデアを実行することで、大雪山を次世代に残していけるよう、継続した保護保全のシステムを構築していきたいです。

(写真提供/大雪山 山守隊)

森羅万象すべてのものにカムイ(神)が宿るという上川アイヌの思想がありますが、彼らは自然をよく観察し、ときに神話に置き換え、尊重して共存を試みています。

実は私も同じ考えで、自然と共存することで、この環境を未来に遺していきたいと考えている。このような価値観が、今、失われつつあるので、私たちの活動を通して皆さんに問いかけていきたいと思っています。

(聞き手/ライター孫田二規子)

 

一般社団法人 大雪山・山守隊
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