上川大雪酒造「緑丘蔵(りょっきゅうぐら)」(上川町)/杜氏 川端慎治さん(2)

地域に根ざした地酒でありたい

川端さん

この道に入ったのは大学時代、石川県の「菊姫」というお酒に出合ったことがきっかけです。そのバランス良く、パーフェクトと思える味わいに感動し、涙を流しながら飲んだことを覚えています。

その後「菊姫」を造った名工・農口尚彦杜氏の下で、しばらく酒造りを学んでいたのですが、ある時、農口さんから「どっちの酒が旨い?」と二つの酒の味見を促されたことがありました。私は自分が試されているのだと思い、『このような理由からこっちの酒です』と必死に考えて答えたら、「そうか、やっぱりこっちか…」って、拍子抜けするような言葉が返ってきて。 

どうやら単純に、自分以外の人は、どちらの酒が旨いと感じるのかを聞いて回っているだけだったんですよね。とても謙虚だと思いました。自分が良いと思う味を押しつけることなく、飲み手がおいしいと思える酒を一途に目指している。その姿勢が垣間見えた出来事でしたね。

醪の状態を確認する川端さん(写真提供:上川大雪酒造)

私たちもそうありたいです。これまでの日本酒は、大きな市場で売れないと生き残れない風潮がありましたが、当蔵の酒は、地元と北海道を主な市場としています。地域や北海道の人に、おいしく飲んでもらいたい酒です。これこそが、地酒だと思っています。

上川町・愛別町限定販売の「神川」シリーズ。左から純米、純米吟醸、純米大吟醸(写真提供:上川大雪酒造)

上川町に遊びに来る皆さま、時には地酒を目当てにする旅はいかがですか。ぜひ、地元の豊かな食材と一緒に楽しんでください。

(川端さん談)